白髪染めのきっかけについて
この話は私の市販白髪染めのきっかけについてのお話です。
私が白髪染めをした前日の、夏のある日のことです。私は帰宅の満員電車で疲れのピークに達していたため、座っていた人を引っ張り起こして席に座ったのです。いきなり立たされたその若者は最初目と口を剥いて何か言いたそうでしたが、私は勇気凛々、彼を睨み返してやりました!
その気の毒な若者は何も言わずにどこかへ去ってしまいました。
座った私はたちまち眠りに落ちました。その眠りは思いのほか深く、私は夢を見ました。職場では中間管理職の正社員です。派遣社員が正社員に向ける視線は厳しくなってきました。私の髪は薄くなりました。私の妻はもうずいぶん前から若い男性と不倫しています。息子は私たちを嫌い口をきこうともしません。私は、派遣社員の中年の女性に恋をしました。彼女も私に好意をもってくれました。彼女は独身で、そして私たちはつきあい始めたのでした。
夢はその彼女が、私の髪のことを心配するところから始まりました。
そして私は、彼女の勧めるビン詰めの白髪染めを使うことになりました。場所は拙宅のお風呂場に一瞬のうちに移動しました。
そうこうするうちに、何事も真剣になる私は、本気で白髪を染めに挑戦しようとしていました。不器用な私のざまを、あなたは微笑みながら見ていました。私は思うようにならない白髪染めのことで頭が一杯になっていきました。
そのとき私の携帯電話が鳴り、目が覚めてしまったのです。私は携帯電話を取り出しました。間違い電話でした。惜しいことをしました。
ふと窓ガラスの外に目をやりますと、空にヘリコプターが飛んでいました。私はなんとなく笑みを浮かべますと、明日は白髪染めを本当にしてやろうと思ったのです。